1. 午前2時、山の一日はここから始まる
都会では時間に追われる。
でも山では、時間をつくる側になる。
同じように急いでるのに、意味はぜんぜん違う。
2:00 テントで目が覚めた。
トイレに行くか迷う。
山小屋のトイレは往復20分の行程。
迷うほど、トイレのために山荘まで行くのが億劫であった。
結局、起きてしまうことに。
3:00 唐松岳頂上山荘へ
そのまま夜明け前の山荘周辺を散策し、4:30に唐松岳山頂で御来光を見る計画を立てた。
外はまだ闇。
でもテント場にはぽつぽつと灯るランプの光。
まるで山が、目を覚まし始めている合図みたいだった。

2. 稜線の分岐で夜明けを待つ“光の溜まり場”
3:40 稜線の分岐到着。
漆黒の山に、遠くの街明かりだけが浮かんでいた。
静かな光と、静かな空気。
「まだ3:40か」と、時間が止まってるみたいに感じた。
10分ほどで登山者2人が到着。
言葉はないのに、同じ空と光を見ている“共有”だけがあった。
こういう距離感が、山っていいよねと思わせる。

3. 早朝4時、尾根は光の河になる
4:00 振り返ると無数のヘッドランプ。
尾根を流れる光の河。
みんな山頂を目指している。
4:30 唐松岳登頂。
朝日を見るのは昨日と逆側の空。
白馬岳・五竜岳・剱岳が朝焼けに染まり、
妙高山の奥から雲海を越えて太陽が昇った。
山頂に響く歓声。
言葉より先に、胸の奥が震える。
私は心の中で、しっかり声を上げていた。
「…すごい。」
母も山荘の上から、同じ色の空を、同じ時間の光を見ていたらしい。
私たちは別々の場所で夜を過ごしたのに、ちゃんと同じ朝を共有していた。

4. 送り出す声は、いつもやさしい
6:30 テント撤収後、母と合流。
八方×五竜の分岐で山岳パトロールの方に行き先を聞かれる。
「五竜山荘です」と答えると、
「ここから10分で、すぐおっかない岩場に入ります。
焦らず、気をつけていってください。」
母がぽろり。
「朝のこういう声がけ、いいね」と嬉しそうだった。
その横で私は、ありがたい言葉を噛みしめた。

5. 牛首の鎖場、私も母もサポートし合う
牛首の鎖場は、今回の山行で一番心配していた難所。
でも到着した瞬間、母は迷いなく鎖を掴んで歩き出した。
その手も足も、躊躇ゼロ。
動きに迷いがない。
私も後を追うが、テント装備の重いザックが崖底へ引っ張る力を感じ、初めて登山で怖いと思わせられた。
その時、母が振り返りひとこと。
「はるきー!足場はしっかりしてる!ゆっくりねー!」
サポートしてるのは私だけじゃない。
母もまた、経験の浅い私の背中を支えてくれていた。
お互い、足りない部分を補って歩いているのだ。
鎖場を通過し、鋭い岩場も難なくクリア。
高度感は“雲の横を歩く”レベルだったが、振り返ると絶景が広がっていた。
切り立つ稜線をみて「こんな所を通ってきたのか」と私は驚いたが、母は落ち着いていた。

6. 地図と植物と笑顔の休憩
牛首を抜ければ道はなだらか。
母は大好きな高山植物を見つけるたびに立ち止まり、さらに歩はゆっくりになる。
でも急ぐ理由がない。
休憩中にちょこんと座って、紙の地図を開き、
裏立山連峰の山名を答え合わせしている母を見て、思わず笑みがこぼれた。
「本当にすごい人だ(笑)」

7. 11:40 五竜山荘、到着と同時に空気がまた変わる
11:40 五竜山荘到着。
さっきまでの光と風の境界が、山荘の赤い屋根で一区切り。
周囲は雲に覆われ始めていた。
母は山小屋へ、私はテント場へ。
チェックインも別々。スタイルは違っても、向いている方向は同じ。

8. 山での談義は止まらない
テントを張り、母とテント場で昼ご飯。
隣のテントは山岳ガイドの方。
気づけばまた3人で山談義が始まる。
装備のこと、岩稜のこと、天気の読み方、歩き方の話。
“山の時間は誰と話しても全部楽しい”
そんな瞬間だった。

9. 雨・光・雨、それすら北アルプスのリズム
パラパラと雨が降り出し、母は山小屋へ戻った。
私はテントの中へ。
ザーザー、そして止む。
太陽が雲から差す。
また雨。
この繰り返しが、“これぞ北アルプスのリズムだ” と感じさせた。

10. 夕方、ガスが世界を染める
夕方、一面を薄いガスが覆った。
静かな山が、また違う顔を見せる。
オレンジ色の光がガス全体を染めていた。
まるで世界の色温度が変わる瞬間。
すべてがふわりと包まれていた。

11. 雲海の上の夕陽
霧(ガス)がふっと軽くなった。
山の輪郭が戻ってくると同時に、風が一枚ページをめくるみたいに空気を切り替えた。
ガスがすーっと斜面を滑り落ちるように下へ降りていく。
その動きを目で追っていると——突然、視界がひらけた。
雲海の上に立っていた。
そしてその先に、圧巻の夕陽。
色も、スケールも、想像よりずっと大きい。
空だけじゃなく、時間そのものがオレンジに染まっていく。
母と私はしばらく言葉を忘れていた。
言葉を交わさなくても「今、同じものを見てる」と分かる沈黙。
それすら、山がくれたご褒美みたいだった。

この旅の空気はInstagramのリールやストーリーにも閉じ込めました。
Instagramでよければ覗いてみてください⛰️ @tk.zero123 ☺️


コメント