2026年1月中旬、母と北八ヶ岳の北横岳(2,480m)に登ってきました。雪山入門の山として知られる北横岳に私は今回が初登山。母は76歳、私は10本爪アイゼンをこの山のために初めて購入しました。ロープウェイで一気に標高2,237mまで上がり、踏み固められた雪道を進む。森の木々に積もった雪、突然現れる暴風の山頂、雪に埋まった七ツ池、そして異世界のような坪庭——。「雪山って、こんなに豊かなんだ」と改めて感じた一日のレポートです。
📋 この記事の基本情報
| 山名 | 北横岳 南峰(2,471m)/北八ヶ岳 |
| 登山日 | 2026年1月中旬 |
| ルート | 北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅→坪庭→北横岳ヒュッテ→北横岳南峰→七ツ池→坪庭周回→山頂駅(ピストン) |
| 総距離・標高差 | 約3.8km/標高差約250m(ロープウェイ利用) |
| 標準コースタイム | 往復約3時間30分(積雪期) |
| アイゼン | 10本爪推奨(私:アベニュー10本爪、母:モンベル10本爪) |
| 注意点 | 山頂付近は強風・体感温度が極めて低い。手袋は外さないこと。 |
| ロープウェイ | 北八ヶ岳ロープウェイ(冬季9:00〜16:00、20分間隔、往復2,600円) |
| 宿泊 | 蓼科グランドホテル滝の湯(1泊) |
| メンバー | 私+76歳母 |
北横岳とはどんな山? 雪山入門として人気の理由
北横岳は長野県の北八ヶ岳に位置する標高2,480mの山です。正式名称は「横岳」ですが、南八ヶ岳にも同名の山があるため、区別して「北横岳」と呼ばれています。
雪山入門として多くの登山者に選ばれる理由はシンプルで、北八ヶ岳ロープウェイで一気に標高2,237mまで上がれるからです。ロープウェイ山頂駅から北横岳山頂までの標高差はわずか約250m。積雪期のコースタイムは往復3時間30分ほどで、しっかり踏み固められた登山道は方向を迷いにくく、初めての雪山として最適の条件が揃っています。
とはいえ、標高2,400m以上の世界は夏山とは別物。山頂付近では強風が吹き荒れ、体感温度は氷点下をはるかに下回ります。油断は禁物ですが、しっかりした装備があれば経験の浅い方でも十分に楽しめる山です。
当日の流れ
出発前の小さな習慣:旅の前夜に作るお弁当
上里SAで食べた朝食は、実は前日の夜に私が作ったお弁当でした。旅の前には冷蔵庫の中身を使い切りたいという理由もあるのですが、思っている以上に母が喜んでくれるのがわかってから、母との山旅では私が朝ご飯を作ることが多くなりました。一人旅のときも良くやります。旅の朝に誰かが作ってくれたものを食べるのは、それだけで嬉しいものですよね。

北八ヶ岳ロープウェイ:スキー場だったのか!
駐車場に着いて最初に驚いたのは、スキーやスノーボードを持った人たちの多さでした。実は「ピラタス蓼科スノーリゾート」というスキー場が隣接しており、ロープウェイはスキー客と登山者が共用しています。恥ずかしながら、スキー場であることすら知らずに来てしまいましたが、それはそれで新鮮な発見でした。
ロープウェイは冬季9:00〜16:00の運行で、通常20分間隔で発車します。私たちが到着したタイミングでちょうど出発したばかりで、きっちり20分待ちました。待っている間にルートをYAMAPで再確認。初めての北八ヶ岳に、ワクワクとドキドキが混じった感覚でした。
🚡 北八ヶ岳ロープウェイ 基本情報
| 山麓駅標高 | 1,771m |
| 山頂駅標高 | 2,237m(標高差466m) |
| 乗車時間 | 約7分 |
| 冬季運行時間 | 9:00〜16:00(20分間隔) |
| 料金 | 大人往復2,600円(イオンカード・モンベルカード・JAFで200円割引) |
| 駐車場 | 無料・約800台 |
| アクセス | 中央道 諏訪ICより約40〜50分 |
10本爪アイゼン選び:アベニューとモンベルを使い比べ
今回、私は初めて10本爪アイゼンを購入しました。それまでは6本爪しか持っておらず、この山に向けて新調したのです。
選んだのはアベニュー(AVENEW)の軽アイゼン(10本爪)。ベルト式で取り付けが簡単なのが特徴で、現地での装着スピードが速い点が気に入っています。もちろん、ギアは現地で初めて使うとタイムロスになるので、事前に家で装着の練習をしてから臨みました。これは登山ギアの基本ですが、特にアイゼンは手が冷えた状態での装着を想定して練習しておくことをおすすめします。

母のアイゼンはモンベルの10本爪で、こちらはコイル状のワイヤーで靴を締め付ける巻きつけ式(ストラップ式)。使用2回目でしたが特に問題なく装着できていました。装着スピードはベルト式のアベニューの方が素早い印象でした。
北横岳のような雪山入門コースでは6本爪でも歩けるケースもありますが、山頂付近の凍結や傾斜を考えると10本爪を推奨します。装着方式はベルト式・ストラップ式・コバなしなど様々。必ず家で装着練習をしてから山に臨みましょう。手袋をしたまま装着できるかも確認を。
坪庭から北横岳ヒュッテへ:雪山ならではの美しさ
坪庭の幻想的な世界
ロープウェイを降りると、そこはもう別世界です。広大な溶岩台地「坪庭」が雪に覆われ、コメツガやシラビソの木々が真っ白な樹氷を纏っています。普段は高山植物が咲き乱れる坪庭も、冬はまるで北欧か別の惑星のような景観になります。ここはロープウェイを降りてすぐ来られる場所なので、登山をしない観光客でも楽しめます。友人と来ても良いなと思いながら、いよいよ北横岳方面の登山道へ。

ここから登山が始まります
登山道:木々の雪が美しい樹林帯
登山道に入ると積雪はしっかりありますが、たくさんの登山者によって踏み固められており、アイゼンさえあれば歩きやすい道が続きます。木々に積もった雪が朝日に輝き、「冬は冬の良さがある」と感じながら進みました。
右手には縞枯山が美しく見えます。縞枯山とは、シラビソやオオシラビソが帯状に枯れていく「縞枯現象」が見られる山で、その独特の景観が遠くからでも目を引きます。北横岳と縞枯山をセットで登る方も多いようですが、私たちには今日は無理です(笑)。でもあの景色を見ていると、いつか登りたいという気持ちが自然と湧いてきました。

母の赤いパンツにブルーのライトダウンは、白い雪の中でとにかく目立ちます。毎回色が違うユニクロのライトダウン、何着持っているのでしょうか……(笑)。

11:40 北横岳ヒュッテ到着
山頂駅から1時間10分ほどで北横岳ヒュッテに到着しました。SNSで見たことがある「鼻の長い像」がヒュッテの前に飾られていて、思わず「あ、これだ!」と声が出ました。ベンチが混んでいたのでそのまま進みましたが、ヒュッテ前のベンチは下山時の昼食休憩場所として非常に重宝します。

予約のない日は閉館(トイレのみ通年利用可・100円)。食事・飲み物の販売はないため、食料・飲み物はロープウェイ乗車前に必ず準備を。ヒュッテ利用時はアイゼンを外すのがマナーです。
森林限界を超えると別の顔が待っていた:猛烈な風の山頂
ヒュッテを過ぎると間もなく森林限界を越えます。太陽はギンギンに出ていたこの日、すれ違った方から「山頂は凄い風で長く居られない」と教えていただきました。樹林帯の中では実感が湧きませんでしたが、森を出た瞬間、体がよろけるほどの強風に叩かれました。
山頂付近の風速は10m/sをゆうに超えていたと思います。日差しはあるのに、体感温度は一気に氷点下の世界です。インスタグラム用に手袋を外してスマホで撮影しようとしたら、あっという間に指先の感覚がなくなっていきました。手袋は絶対に外してはいけません。

強風でした
母と山頂標識で写真を撮った時、母が帽子を飛ばされないように必死で手で押さえていた姿が印象的でした。それでも笑顔でした。

山頂からの360度パノラマ
強風の中でも、景色は素晴らしいものでした。
奥には蓼科山。昨年11月に母と二人で登った山が、今はすっかり白く雪化粧をして見えます。同じ山なのに、季節が変わるとこれほど表情が変わるのかと感動しました。そして南八ヶ岳の主峰群——赤岳・阿弥陀岳・横岳・硫黄岳の稜線が、距離を置いてくっきりと見えました。夏に赤岳や阿弥陀岳を登ったことはありますが、冬の南八ヶ岳はまだ別世界のように感じます。インスタでフォロワーさんが冬の赤岳を登っているのを見ると憧れますが、まだ躊躇するレベル。いつか友人や自分だけで行くかもしれません。少なくとも今の母と行ける場所ではありません。

晴れた日には北アルプス、中央アルプス、南アルプス、御嶽山、浅間山、霧ヶ峰、美ヶ原まで見渡せる360度の大パノラマです。
南峰まで。北峰は強風で断念
実は後から気づいたことですが、私たちが到達したのは北横岳南峰(2,471m)まででした。北峰(2,480m)もすぐそこにあったのですが、あまりの強風と寒さで先の道まで確認する余裕がなく、南峰で十分満足していたので下山を決断しました。南峰からは縞枯山や南八ヶ岳の展望が、北峰からは蓼科山が大きく見えるそうです。次回はぜひ北峰まで行きたいと思います。
⚠️ 冬の山頂付近 注意ポイント
- 山頂は強風。体感温度は極めて低く、長居は危険
- 手袋は絶対に外さないこと(撮影中も)
- 帽子は飛ばされないよう固定を
- 南峰で引き返すか北峰まで行くかは風の状況で判断を
北横岳ヒュッテ前でランチ:ポッキーでコーヒーをかき混ぜる母
下山途中、北横岳ヒュッテ前のベンチでお昼休憩にしました。母がテルモスからコーヒーを注いでくれました。砂糖を持参していたのですが、マドラーを忘れていた……かと思ったら、母がポッキーを取り出してコーヒーをくるくるかき混ぜ始めました。「さすが登山歴56年のベテランの知恵だな」と笑いながら感心しました。山での知恵とユーモアはセットです。

ポッキーでかき混ぜる
七ツ池:雪に埋まった池で遊ぶ76歳
ヒュッテから数分下ったところにある七ツ池に寄り道しました。無雪期には苔むした静かな山上湖として知られていますが、冬は完全に雪に覆われています。どこが池なのかまったくわかりません。一面の雪原です。
しかし母は大喜びでした。「池の上に立てる!」と言いながら雪の上をはしゃいで歩いていました。76歳のはしゃぎっぷりを見ていると、こちらまで嬉しくなります。無雪期の七ツ池も訪れてみたいと思いながら、再び下山の道へ。

坪庭周回:まるで遠い惑星
下山の途中、少し回り道をして坪庭を一周してから帰ることにしました。朝に通った坪庭も、時間帯が変わり光の角度が違うと、また別の表情を見せます。
時に風が渦を巻き、雪煙が舞い上がる景色は、異国の地というより、遠い惑星にでもいるような不思議な感覚でした。母も両手を広げて、何か神秘的なものでも感じているような仕草をしていました。静寂と風の音だけが響く、特別な空間です。ここはロープウェイを降りてすぐ来られるので、登山装備がない方でもこの景色だけで十分に価値があります。

自然を感じる
14:00、坪庭のキツツキの看板(山頂駅の目印)の元に戻り、ロープウェイで無事下山しました。

宿泊:蓼科グランドホテル滝の湯
この日の宿は蓼科グランドホテル滝の湯。標高約1,250mに位置する蓼科高原の温泉ホテルです。
冷えた体に滝ノ湯川を眼下に臨む渓流露天風呂が沁みました。特に冬の露天風呂は、冷たい空気の中で温泉につかる格別さがあります。庭園大浴場と渓流露天風呂の男女入れ替えで4種類の浴場を楽しめるのも魅力です。
夕食は和食・洋食・スイーツ約70種以上のビュッフェ。全長約15mのライブキッチンカウンターで料理人が目の前で調理する出来立て料理は迫力があり、シンボルの石窯ピザも美味しかったです。母と二人して、歩いた分以上にしっかりカロリーを吸収してしまいました(笑)。
🏨 蓼科グランドホテル滝の湯 施設情報
| 住所 | 長野県茅野市北山4028 |
| 温泉 | 蓼科温泉/渓流露天風呂・庭園大浴場・貸切風呂 |
| 夕食 | 和洋スイーツ約70種ビュッフェ(ライブキッチン・石窯ピザあり) |
| アクセス | 諏訪ICまたは諏訪南ICより約30分 / 茅野駅よりバス30分 |
| 冬季 | スタッドレスタイヤまたはチェーン必須 |
まとめ:北横岳は雪山入門として本当におすすめ
今回の北横岳山行を振り返ると、雪山ならではの魅力がこれでもかと詰まった一日でした。樹林帯の樹氷、凍りついた七ツ池、異惑星のような坪庭、そして山頂からの360度パノラマ。ロープウェイ利用で標高差を減らしても、景色の密度は本物の雪山でした。
一方で、山頂の暴風と寒さは油断できないものでした。「雪山入門」といっても防寒装備の準備は夏山以上に重要です。初めての雪山を検討している方は、天気予報をしっかり確認し、特に山頂付近の気象情報をチェックしてから臨んでください。
✅ こんな人におすすめ
| ◎ | 雪山デビューを考えている方 |
| ◎ | ロープウェイ利用で体力的負担を減らしたい方 |
| ◎ | 高齢の親や家族と雪山の景色を楽しみたい方 |
| ◎ | 樹氷・坪庭・七ツ池など見どころを凝縮して楽しみたい方 |
| △ | 強風が苦手・防寒装備が十分でない方(日程・装備の準備を万全に) |
⚠️ 冬の北横岳 持ち物チェックリスト
- 10本爪アイゼン(事前に家で装着練習必須)
- 厚手の防寒グローブ(替えも持参を)
- ニット帽・ネックウォーマー・ゴーグル(強風対策)
- アウターはハードシェルかウィンドプルーフのもの
- テルモス(熱湯・コーヒー)
- 行動食・昼食(ヒュッテは予約なし日は閉館、食料販売なし)
- スタッドレスタイヤ(ロープウェイまでの道路、冬季は必須)
- YAMAPなどで当日の積雪・風情報を事前確認
📍 北八ヶ岳ロープウェイ:長野県茅野市北山4035-2541 / TEL: 0266-67-2009
🌐 公式サイト:https://www.kitayatu.jp/
📍 蓼科グランドホテル滝の湯:長野県茅野市北山4028 / TEL: 0266-67-2525
🌐 最新の登山道状況はYAMAP・ヤマレコで確認してください。
📱 Instagramでも動画で紹介しています
この山行の様子は、インスタグラムでも動画でお届けしています。樹氷の美しさ、暴風の山頂、雪に埋まった七ツ池、坪庭の神秘的な景色など、映像ならではの迫力をぜひ感じてみてください。
アカウントは @tk.zero.mountain です。フォローしていただけると励みになります!



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